こども外来
こども外来について
- 経験豊かな児童精神科医による診察
- 心理職による遊びを活用したセラピー(カウンセリング)
こども外来では、地域医療の一環として、南部地域にお住まいの中学生までの子ども達を対象に、様々な心の問題全般について医学的な診断や関わり方の相談を行っています。
当院には、
「学校に行けない」
「じっとしているのが苦手」
「落ち着きがない」
「集団生活が上手くいかない」
「発達が気になる」など、
様々な悩みを抱えた子ども達やご家族が来院されています。最近は『発達障がい』のご相談が多いので、ここで少し『発達障がい』について説明しましょう。
発達障がいとは
発達障がいと聞いて、どのような特徴があるのか、みなさんイメージができますか?
よく聞く病名として、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障がい(ADHD)、学習障がい(LD)、精神遅滞などがあります。細かな診断基準はありますが、ここでは大ざっぱに、発達障がいを説明してみたいと思います。なお最近、診断基準が改訂され、呼び方にも変化があります。
発達障がいとは、脳の働きの偏りが原因で、特定の分野が極端に苦手になっている状態といえます。
苦手な分野が社会性(人と関わるのが苦手、人と情緒的な交流ができない、気持ちを察することが苦手、人よりも物に興味がいきやすい、こだわりが強く融通がきかない、感覚の敏感さや鈍感さなどがあるなど)の問題であれば「自閉スペクトラム症(障がい):ASD」と呼びます。(この中でこだわりや感覚の問題が見られない場合は「社会的コミュニケーション症(障がい)」と呼びます。)
苦手な分野が注意力や集中力の問題であれば「注意欠如多動症(障がい):ADHD」と呼びます。
苦手な分野が知的機能の問題であれば「知的発達症(障がい)」と呼びます。
苦手な分野が「字を読む」「字を書く」「計算する」など一部の能力の問題であれば「限局性学習症(障がい):LD」と呼びます。
なお、これらの診断名(特徴)を1つだけ持っている方もいますが、2つ以上あわせ持っている方も多くみられます。
発達障がいの原因は ?
医学的にはまだ解明されていませんが、中枢神経系(脳)の器質的・機能的障がいによってもたらされるものであることは明らかとなっています。
つまり、生まれつき何らかの原因で、脳の働きがうまく機能しないということです。
「育て方が悪かったのかしら?」と不安になる方もいらっしゃいますが、親の育て方や周囲の関わり方が原因で発達障がいになることはありません。ただし、関わり方や環境調整、療育、教育を通じて、本来持っている特性の好ましくない面が弱くなったり、良い面を伸ばして行くことはできます。
「ゆっくり成長する」子どもたちかもしれませんが、子どもの可能性を信じて、じっくり関わっていきたいもので
発達障がいの種類と特徴
自閉スペクトラム症(障がい)
自閉スペクトラム症の人たちは、ものの見方・感じ方が独特です。周囲の人と同じように理解できないこともたくさんあります。人とかかわることや、自分の気持ちを相手に伝えることにも難しさを持っています。
特徴その1
人とかかわるのが苦手
目が合わなかったり、身振りや手振りの表現が乏しい、いつも一人で遊んでいたり、まるで周囲の人に関心がないように見えます。
特徴その2
気持ちを察することが苦手
言葉の遅れだけではなく、相手の表情を読み取れない、それらだけではなく、言葉以外の他人の気持ちを理解したり、自分の気持ちを適切に伝えることが苦手です。
いずれにしても、うまく周囲の人々と人間関係を築けないところに一つの困難さがあります。
特徴その3
こだわり
関心が極端に限定されていたり、自分の決めたルールには厳格に従ったりするなど、いわゆる融通性にかける言動が見られることが少なくありません。変化への対応も難しく、急な変化でパニックに陥ることもあります。物事を総合的に判断することや、整理し順序だてて行っていくことに、困難さを抱えている人もいます。
特徴その4
活動と趣味の限定
いつも同じ遊びを繰り返しており、興味もなかなか広がりません。見立て遊びやごっこ遊びにはあまり興味を示しません。
一方、自分で興味があることには、△△博士といわれるほど詳しかったりします。
特徴その5
感じ方のアンバランス
みんなが驚くような音にも平然としているのに、特定の音を嫌がってパニックになったり、音・痛み・寒さ・暑さなどの感覚に鈍感さと敏感さをもっていて感じ方が一貫しません。
特徴その6
その他の特徴
自閉症の人には、言葉がないか、遅れる、おうむ返しが多い、同じ話や質問を繰り返す、などの特徴が見られることもあります。
自閉スペクトラム症(障がい) の接し方
接し方その1
本人が見通しを立てやすい環境づくり
次に起こることが予測できなかったり急に予定が変わったりすると苦痛を感じることが多いので、見通しが立つように予定をあらかじめ伝えます。言葉だけではなく、文字・イラスト・写真など視覚的情報を用いると有効です。
接し方その2
おちついた環境作り
色々な音が聞こえたり見えたりすると、気が散ってしまう人もいます。これを防ぐために、余分な刺激を少なくするなど、様々な工夫をすることが大切です。
接し方その3
ルールや指示は明確に
ルールは、明白ではっきりとした具体的なものにします。本人の能力に合わせた実行可能なものにします。
接し方その4
できるだけポジティブに接する
いいところを見つけて、それを本人に伝えるように心がけます。
接し方その5
こだわりや興味を活かす
本人のこだわりや強い興味は、それをなくしてしまうよりも何かに活かせないかと考えてみます。興味は、本人の能力を発揮するきっかけになることがあります。
接し方その6
冷静に落ち着いて対応する
困った、不適切な行動は周りを困らせようと「わざと」しているのではありません。 周囲が困る、あるいは「困っている」という認識ができないことが多いようです。 感情的にならず冷静に対応しましょう。
限局性学習症(障がい):LD
特徴
限局性学習症は、教育的な定義では全般的な知的発達の遅れはないかもしれませんが、
「聞く」「話す」「読む」 「書く」
「計算する」「推論する」 の特定の分野の習得に、著しい困難さをもっている状態とされています。
本人は、一生懸命努力しているのに、その努力が報われず、特定の分野のみ学習の遅れが生じます。周囲からは学習努力が足りないと見なされ、低い評価を受けがちになり、結果的に本人の学習意欲・自信の喪失、自己否定感につながっていく場合が少なくありません。
限局性学習症(障がい):LD の接し方
接し方その1
周囲からの理解
親や教師は「どうしてできないのだろう」と思ってしまいます。しかし、本人もできるようになりたいのに、うまくいかないという思いをもっています。できないのではなく、できるようになるのに時間をかけることが必要です。
接し方その2
成功体験・自信づけ
数多くの失敗体験を通して、自信をなくしてしまうことがよくあります。機会を見つけて自信を持たせ、物事に取り組む態度や意欲を育てます。
注意欠如多動症(障がい):ADHD
社会生活に支障をきたすほど注意力が不足していたり、衝動的であったり、多動であったりすることを特徴とする障がいです。通常、その症状は幼少期から見られます。具体的には気が散りやすい、忘れものが多い、落ち着きがない、自分の行動をコントロールすることができないなどの行動として現れます。
ADHDのタイプは、気が散りやすく注意が散漫な傾向の強い「不注意優勢型」、多動で待つことが苦手な「多動性・衝動性優勢型」、両者の特徴を持つ「混合発現型」の3つのタイプに分けられます。
特徴その1
不注意
年齢や発達に見合わない注意力の弱さ(気が散りやすく、注意が持続できない)があります。
特徴その2
衝動性
順番を待つのが難しい、他の人がしていることをさえぎったりするなどの行動が見られます。
特徴その3
多動性
皆が座っているときに席を離れてしまう。
じっとしていないなどの行動が見られます。このような症状のため、学校・仕事場や遊びなどの場面でいろいろな問題が起きます。
注意欠如多動症(障がい):ADHD の接し方
接し方その1
長所の自覚と自信づけ
本人のいいところを褒め、「できる、やれる」という自信を持たせます。
接し方その2
苦手なことは時間をかけてゆっくり
苦手なこととどう向き合うか一緒に考え、できることから少しずつ取り組んでいきます。
接し方その3
感情の表現と話し合い
失敗したときは頭ごなしに叱るのではなく、自分の気持ちを表現するように促し、その気持ちをきちんと聞き、話し合います。
こども外来の治療について
- 当院のこども外来は完全予約制になっています。受診当日は、精神保健福祉士がご相談内容や近況等の聴き取りを行い、その後医師による診察が行われます。
- 特に初回は時間をかけてじっくりお話をお伺いしています。また、子どもの心の状態や発達の特性を把握するために心理検査が必要と医師が判断した場合には、後日に心理職による心理検査も行っていきます。医師は得られた情報を総合的に判断しながら診断を行い、今後の治療や援助方針を立てていきます。
- 治療の中で、医師が必要と判断して薬物療法をお勧めする場合があります。
この場合、お子さんにお薬を飲ませるのを心配されるご家族は多いので、お薬を利用する目的や副作用などについて説明の上、ご本人とご家族が納得されてから処方するように配慮しています。 - また、当院には訓練を受けた心理職がおり、必要に応じて子ども達に遊びを活用した治療(遊戯療法・プレイセラピー)や、ご家族へのカウンセリングを行っています。
なお、当院では診断や関わり方の相談を行っていますが、言葉のトレーニングなどの療育的な関わりは行っていません。また、身体面の治療が優先される場合には、他院の身体科での治療をお願いしています。
こども外来の受診方法について
こども外来は完全予約制になっており、毎週水曜日の午後に診察を行っています。
お電話でご相談いただくと、最初に精神保健福祉士が対応し、受診可能な日程を調整します。受診をご希望の方は、お気軽にお電話ください。
日時:毎週水曜日の午後
対象:南部地域にお住いの中学生までのお子さま